【はしご酒】「気まずいお酒」に苦悶するワイフと僕ハズバンドの哀愁はしご酒。「一徳」→「大将」篇。

【はしご酒】「気まずいお酒」に苦悶するワイフと僕ハズバンドの哀愁はしご酒。「一徳」→「大将」篇。
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今回ご紹介する東京はしご酒は、高円寺にある、焼鳥「一徳」と焼鳥「大将」のはしご酒です。

夕方からスタート

夕方からスタート

中央線を代表するサブカルタウン「高円寺」

中央線を代表するサブカルタウン「高円寺」
高円寺駅

近頃、この世には逃げ切れない「気まずい飲み会」が存在するのではないかと思うハズバンドです。平和主義、ことなかれ信者なボキはこれまで、比較的安全な明るい道を歩いてきました。しかし3年前、人生波乱含みな大トラ女子と結婚して以降、どうも荒ぶるスピリッツが純白だったボキのハートに影響を及ぼしているのを感じるのであります。本日、そんな大トラワイフがボキに集合をかけたのは、まだ日が落ちきらない夕暮れ時。「ぜったい遅れるな。夏、外飲み、夕暮れ時、この3テーマに高円寺をはしごするのだ」。高円寺は中央線を代表するサブカルタウン。ギターを抱えた自称ミュージシャンやヒッピーが住み着く町というイメージだ。ここへ来ると、まっとうなサラリーマン生活が、遠い世界に思えてくる。森ガール的男子のボキにしてみると、高円寺はアジアの異国。あぶなっかしい空気が溢れるデンジャラスタウンなのだった。

外の席でゴリゴリ串とニンニクにファイヤー! 「一徳」

外の席でゴリゴリ串とニンニクにファイヤー! 「一徳」
一徳

最初にやって来たのは路地の一角にあるシブい焼き鳥屋だった。窓が開け放たれたカウンターだけの店内、焼き台から白煙が勢いよくあがり、時折、細い火柱もぱちぱち弾けている。対面にもセカンドハウス的な客席ルームがある。ワイフが目指したのは、店の外に無造作に配置された手作りテーブル席だった。「おっと、これをどうぞ。座布団代わりに」と店の兄さんが出して来たのは、ビールケースの椅子に乗せる段ボールだ。さすが……アジアの最果ては気配りポイントがアウトドアだ。

「メニューはあちらです」と兄さんが指差したのは、セカンドハウスの壁に貼られたメニュー表だった。遠い。視力検査以上に遠い。が、食い意地のためなら数マイル先の獲物でも射止めるブッシュマンのワイフがボキに読み上げる。

「焼鳥は100円から、やきとんはオール100円ね。わたしは鶏のなんこつと、イカ刺し」「じゃ、じゃあ僕はレバとアジフライ、あとにんにく焼き!」勘で読み取ったものを慌てて注文する。「今日のなんこつは、“ごりごり”になりますが」と兄さんが言う。ごりごりってなんだろう。ワイフが「なんです? こりごり? ごりこり? 夫はわしにもうこりごーり」などとふざけていると、「ゴリゴリってのはニワトリの膝のところだよ……」ともの凄い渋い声で背後から響いた。ハッと振り返ると焼き台で串を返していた店主である。思わずそのキャラの濃さに、ボキは二度見してしまった。

「人呼んで、高円寺の和製ジャンレノだ」とワイフが言う。人っつってもワイフが勝手に命名し知人友人に広めているのだ。ギリシャ彫刻のような彫りの顔。小さなメガネを額にのせる「でこメガネ」がこんなにスタイリッシュな人もいないだろう。逞しい腕と締まった胸板。無駄口は叩かず、人をみだりに寄せ付けず、それでいてワイフのように能天気に近づいてくる輩も邪見にはしない。憧れの大人の男である。

大瓶で乾杯したあと、ワイフがイカ刺しを食べながらウコンハイを頼む。「わし、ゆうべはくだんの同級生ライバルと緊張のあまり飲み過ぎた。なぜ高円寺にしなかったのかが悔やまれる。気まずい飲み会に、このカオスな町こそ最適だ」とひとりごちている。 ワイフは、先だってFacebookでつながっていたライバル的同級生が活躍したのを知ると、あろうことかジェラシーを炸裂させ、「ブロック」するという大人げない行動をとり、常識人のボキをどん引きさせたのだった。そのライバルとの飲み会がゆうべついにあったのか……!

間もなく串が到着した。全部「塩で」と頼んだつもりでいたが、なぜかタレで来た……。が、もはやボキはジャンレノの御心のままにモードだ。高熱で一気に焼き上げる技なのか、外側はこんがり中はふっくらした串はどれも旨い。ナンコツはナンコツでも、ぽりぽりした剣先型ののどなんこつと、肉付のいいひざなんこつでは味わいが違う。また目玉が落っこちそうに感動したのは、真っ黒焦げのにんにくだった。「ユー、まずはこれを食べよ」とボキが絶叫する。ワイフが「ぬ……なっ」と声にならない声を上げた。舌の上でとろけるにんにくは、まるで上質の肉の味わい。夫婦はしばし言葉を失ったのだった。

店の中では、相撲中継に皆が湧いている。ジャンレノはどちらを応援しているのか、拳を握って釘付けになっている姿もいい。白鴎が負けた日だった。横綱が負けるとみんな燃える。そこに強者のかんたんではない人生を見るからだろう。

じつはボキも横綱と序の口クラスの取組みが予定されていた。もちろん序の口がボキだ。ボキは取引先の条件を丸呑みせず、あるプロジェクトをすすめようとしていた。その苦しい交渉をしたのち、飲みに誘うつもりだ。決裂し白紙に戻る可能性も大で、飲む前から「気まずい酒」がまあまあ確定済みの宴である。お上に逆らうなんてPEACE&PEACEなボキには基本ありえない。でも膝をガクガク震わせながら、責任をとる覚悟で、自分がしたい仕事を小さな声でも叫ばねばならない、後輩のためにも。と、初めて思ったのだ。 言いなりの下請け根性とはおさらばだ!

「はいよー。アジフライね」。きつね色に揚がったフライが到着した。まさかのin丼だ……! 中には山盛りキャベツ。ふかふかのさくさくを味わうボキの頬を夏の風がブンとなでた。流れる汗もいやではない。 「ウコンが五臓六腑にしみわたるぜ〜」とワイフが言いながら、ボキのアジフライを食べる。 「ゆうべ、ライバルとの宴はいかに」とボキ。「わしには、煙が必要だったんだ……」とワイフ。聞けば飲むのは10年ぶりらしい。それも仲違いしたまま、たまさかFacebookでつながったという、こじらせた果ての再会だったのだ。

2軒目移動中

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唐揚げ まるから

「なぜ煙が必要だったか……。犯人だって弁護人と面会するときはガラス一枚はさみこまれるだろう」たとえがまったくわからないが、その場合は、ワイフが牢屋側だ。「つまり、彼とわしにはあらゆる確執をマイルドにする、煙のカーテンが必要だったんだ」。 鉄板、または鍋から立ち上る煙か湯気が向き合うふたりの間に欲しかったらしい。また、それが外であれば流れる汗が夏休み感を演出し、夕暮れどきなら「おや、今日の茜空は目に沁みるぜ〜」とこころを柔らかにし、気まずさもまぎれてくるという計算らしい。なるほど。煙のカーテン、夏の夕暮れ、外酒。ぜひ後学ため、気まずい酒おすすめスポットは押さえておきたい。

アンティークショップや、1個60円の唐揚げ専門店(めちゃうま!)が並ぶ商店街の路地を歩きながら、ワイフがゆうべを思い返している。「ある町の煙あり、外席がある焼肉屋を指定したのはわしだ。ところが昨日は大嵐。外の卓は使えない上に、焼き肉は無煙システムに進化しており、おまけに他の客はほぼいない、つまり貸し切り状態のシーンとした個室のような静寂の中でのさし飲みだったんだ……!」  ワイフも苦しいだろうが、自分の尻尾をかんでぐるぐる回ってる犬のような友相手に飲む人も気の毒である。

火鍋から立ち上る湯気のカーテンで、人と人は雪どける? 「大将」

火鍋から立ち上る湯気のカーテンで、人と人は雪どける? 「大将」
大将3号店

「この店は高円寺にはいくつか店舗がある老舗だ。カラオケができる店もあるし、それぞれ個性が微妙に違うのが面白いんだ」とワイフ。焼鳥ともつ焼きの他に、この3号店が売りにしているのは「火鍋」らしい。早速、外席を確保すると、ワイフは「火鍋、めっちゃ辛くしたのを一人前ください」とパンチヘアの兄貴に声をかける。「あいよ、火鍋一丁めちゃ辛で〜」と威勢もいい。

鍋は2人前からという世の居酒屋常識をくつがえす、1人前(750円)には、生ラムからニラ、つくね、もやし、春雨などが含まれていて、はしご酒のアテにはちょうどいい。 かつ、その小鍋の器具にボキは興奮した。キャンプで使うような小鍋だが、見たことのないデザインだ。「これ、上海でしか売ってないやつなんです。社長が仕入れてきたっす」と兄貴。「何で火を燃やすの」と聞くと、「アルコールっす。これ、アルコールランプと同じ仕組みになってるっす」と言う。へ〜ほ〜感動しながら、湯気を上げる鍋をワイフと二人でじーっと見つめる。確かに、湯気や煙があると、人対人の間にワンクッション挟まれる。先ほどのウコンハイでワイフは元気を盛り返してきたらしく、すかさず大瓶ビール(480円)も注文している。

「お兄さんのパンチパーマ、素敵ですね」ワイフが火加減を見に来た兄貴に言うと、「あざっす。でもこれはパンチじゃなくて、ニグロっす、ニグロ」「ああニグロねニグロ」「そうニグロ」と笑い合う。ニグロとは黒人の天然くるくるパーマのことだ。そんなヘアトークでさえ、夏の空の下でするとただ面白い。 ……この開放感か。さし飲みでありながら、脇役も自在に巻き込めるというフリーゾーン。

鍋が煮立って来た。「じゃ、各自勝手に取るということで」とワイフ。煙というカーテンがぎすぎす感をマイルドにしてくれているのに、ここで気を使いあってちゃ台無しだ、という考えだ。よって箸もじか箸を強制する。「すべてを分かち合うところから第一歩は始まるから」そうだ。人ぎらいのくせに、かかわると決めたら、今度は相手が戸惑うほどに距離を詰める。それがわがワイフ。

鍋は、ニグロの兄さんの気合いを感じる辛さであり、ボキは「辛いよおおおお!」ともだえた。その様子を見ながらワイフが言う。「ゆうべのさし飲みでも、激辛料理を食べた点は良かった」「なんで!」「脳天に唐辛子の花火がドカーンと上がった異常事態でしか、言えないことがある」。 ワイフは、昨夜、『ヒ〜辛い! あんた(ライバル男子)を10年間嫌いだったんだ。辛い〜』と叫び、相手は『ヒ〜。そんなことは知ってるよ! 辛い〜』『避けてたもんな、辛い!』『お互い様。ヒ〜』と言う、じつに馬鹿げた言い合い激辛祭となったらしい。

満足感たっぷりの鍋を食べ終えると汗が爽やかに引いた。サッカーの試合後のよう。風が涼しい。大瓶ビールを運んで来た兄貴が「火鍋ってS字で仕切られてるでしょ、なんでS字かわかる」と言う。言われてみれば、確かに不思議だ。「上から見ると、中国の国旗のマークになってるの」。おお〜。カットインしてくる役者は皆、嬉しくなるほど気さくだ。気まずい飲み会の時はここで決まり!とボキが満足していると、「次回あいつをここに連れてきてやるか」とワイフが言った。10年ぶりのライバルはどうやら未来につながるらしい。

「こっちは、けんか別れのまんまでいいと思ってた。Facebookでつながったのも、単なる社交辞令だった。でも10年も会ってないのに、敵はわしについて詳しかった……。きもいだろ、なんでかわかるか」とワイフが淡々と言う。彼は遠くから旧友(ワイフ)の本を買いもとめて読んでいたのだった。

エピローグ

エピローグ
高円寺駅

その昔、ワイフと同級生のライバル男子は同じチームで仕事をしていたんだそうだ。まぶだちだったんだそうだ。しかし彼は自分の夢を叶えたいと、ある日、友も仕事も全てをうっちゃり海外に旅立ったんだそうだ。今、ワイフに会いたかった理由は、彼の中で二つ。一つはじぶんが変わったこと。もう一つは、またワイフと仕事がしたいこと。Facebookは液晶画面の社交場だ。そこからの、「会う」だ。気まずい方々には、煙のカーテン。その上、激辛料理と夏の風吹く外席があったらなお素晴らしい。 ボキも気まずいミッションを乗り越えるぞ。「社長、辛いっすね〜! 社長、首を縦に振ってください〜」「暑いな〜! 君の好きにはさせないよ〜」「社長、わき汗すごいっすよ〜。けど僕も譲れません! 辛いよ〜」「君、立場をわきまえなさい! それにしても辛いな〜」「ですね〜。でも負けませんわよ〜〜!」イメトレ完了。なんだか勝てそうな気がしてきたボキであった。

Finish! Nice outing!

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