【はしご酒】妻に泣かされっぱなしの私ハズバンドの哀愁ハシゴ酒!「印刷職人の町の酒場DE僕と妻は決裂した」。「磯貝酒店」→「椎名」。

【はしご酒】妻に泣かされっぱなしの私ハズバンドの哀愁ハシゴ酒!「印刷職人の町の酒場DE僕と妻は決裂した」。「磯貝酒店」→「椎名」。
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泣かしぃたこともある♩冷たくしてもなお寄り添う気持ちがあればイイのさア♩というわけで、大トラの妻に泣かされっぱなしの私ハズバンドの哀愁ハシゴ酒。本日、妻に連れられてやってきたのは江戸川橋。

夜からスタート

からスタート

本日、妻に連れられてやってきたのは小さな印刷工場が立ち並ぶ職人の下町、江戸川橋

本日、妻に連れられてやってきたのは小さな印刷工場が立ち並ぶ職人の下町、江戸川橋
江戸川橋駅 4番口

日本を代表する大きな印刷会社が鎮座し、界隈には小さな印刷工場が立ち並ぶ職人の下町。凸版印刷の印刷博物館では、今では珍しい活版印刷の機械も展示、本が作られる行程が一日居れば学習できる、そんなアカデミックなタウンでもあるのです。

昔の書体好き、紙好き、見学好きなボキにとっても一度来てみたかった町。「そんな職人の町だからこそ良い酒場があるのダ。工場見学はあとまわしだ」と例によって暴君ぶりを惜しみなく発揮する妻の後ろを渋々ついて行くと、山田太一ドラマ「ふぞろいの林檎たち」に登場しそうなシブい酒屋が一軒あったのであります。

チョンマゲの時代から続くお江戸の角打ち「磯貝酒店」

チョンマゲの時代から続くお江戸の角打ち「磯貝酒店」
磯貝商店

「よし入るぞ」と妻が店の中に攻め込んだ。続いて僕がおそるおそる中を覗く。「え?」といきなり怪訝な顔つきで迎えるのは番台に座るおばちゃんであった。えって……。えってえって何?小心な僕が早くもここはアウェイのイチゲンが来るような店ではないのではとうろたえていると、妻が僕に「元気良くあいさつをしろ。そして手順を聞くのだ」と足を蹴飛ばす。

「あ……の、あのですね。僕ら初めてなんです。こちらは角打ちさんですよね」カクウチさん。さん付けするといきなり人の名字になった。中央のテーブルを囲んでいる先客のサラリーマンがクスクス笑いながら、背中で僕のウブな言動に注目しているのを感じた。プレッシャーだ。すさまじい緊張感だ。まるで大口のクライアントが居並ぶ応接室で一人立たされてる新人、みたいな絵だ。

小さな四角い店はテトリスみたく、テーブルが無駄なく配置されていた。「お酒はそこの冷蔵庫。お代はその都度」。巨大な冷蔵庫の中には、ビールの他にアサヒの発泡酒170円と、僕が大好きな氷結は200円。それに番台には缶詰やポテチ、カニカマが並ぶ。

カニカマ狂の妻が「このカニカマはまだ見たことがないわ!太くておいしそ~」と歓声を上げる。たかがカニカマに異常なまでの感動ぶり。

己の好感度を上げようとするいつもの手口に夫ながら畏敬の念さえ抱く。「お店は長いんですか…?」僕がおずおずと尋ねると、おばちゃんは「いつからも何も」と誇らしげだ。常連が、「ここは江戸の時代からよ。清水次郎長もどこに逃げようか悩みあぐねここに迷い込んできたんだから~。なんちゃって」などと本気ともジョークともつかぬ感じで、思いがけない歴史上の人物の名前まで登場する。 「うちのおじいさんのおじいさんの時代には、山の上に配達に行くとまだチョンマゲ結ってたって言ってたもの」。まさに、お江戸でござるワールド……だ!そういえば、界隈には元総理を勤めた鳩山一郎の私邸で「音羽御殿」と呼ばれた鳩山会館もある。「山の手」と「下町」が地形的にも存在する町であるからして、素晴らしい急坂もある。大トラの嫁を、あの坂の上から転がしてみたい。

ふと、「10月1日は日本酒の日」という古いポスターを発見した。おばちゃんによると、「なんでかわからぬが昔からそういうことになっている」のだそうだ。「法事もこんな気兼ねない角打ちでできればいいのにな」と妻が薮から棒に言う。妻はじつは大変な”気にしぃのアガリ症”なのだった。僕の実家静岡に行くと、借りてきたドラ猫のごとく押し黙っている。「今さらしらふで血もつながらぬ親戚と親交できるか」というのが言い分だ。僕のじいちゃんが他界したのは去年のこと。その法事がドラ猫にはたいへん気が重い行事らしい。しかし、そんなことを話し合えば夫婦喧嘩の火種のもとだ。

扉からは気持ちのいい春の夜風が吹き込んでくる。「ところでこの手作りのビール箱のゴミ入れ、ユーのじいちゃんが作りそうな傑作だ!うははは!」と妻がリラックスしすぎたのか、狂気じみたテンションを放ち始めた。僕は静かに河岸を変えることを提案した。

タマネギサワーもこんにゃくもじいちゃんマスターの傑作 「椎名」

タマネギサワーもこんにゃくもじいちゃんマスターの傑作 「椎名」
椎名

僕はじいちゃん子だったことを告白しよう。四人兄妹の真ん中に生まれた僕は、じいちゃんと似ている。不器用だけども日曜大工と工作が好きで、きちきちとなんにでもメモを取る。タッパーにもタオルにも名前を書く。大雑把なワイフは、名前を見つけるたびにけらけら笑うが、戦争に行ったじいちゃんが戦友から毎年たくさんの年賀状が届くのを僕はとても誇らしく思っていた。その積まれたハガキの山がだんだん低くなり、わずかになった頃、じいちゃんは長年素晴らしいドラテクを発揮していた車で小さな事故を起こした。

車を返上してからのじいちゃんは大好きなホームセンターにも行けず、縁側でひなたぼっこばかりするようになったのだ。そんなことを思い出し、ちょっぴりセンチメンタルになった僕の手を引き、妻が、「もっとじいちゃんちっくな店があるゾ」と連れて来たのはすぐ近くにある、定食屋のような居酒屋だった。

明るい店内に一歩入ると確かに妻が言うように、「じいちゃんちっく」なムードがそこここにあった。まず椅子だ。何と何を組み合わせたのか、店のサイズにマッチングする手作りチェア。

天井には焼酎のペットボトルを生かした換気扇。厨 房の中には巨大な昔懐かしいコーラの自販機があるが、それは冷蔵庫ではなくお会計黒板の役割を果たしている。

把手にサポーターを巻いた中華鍋を振るうのは、 店の主であるおじいちゃんだ。して、皆が頼む酒は「タマネギサワー」。なんだ、タマネギサワーって!明日お口くさくさになっちゃうんじゃないの!迷わず妻がタマネギサワーを頼む。「タマネギの外側の皮を焼酎に漬け込んでつくるの。だからタマネギの栄養は入ってるけど、匂いや味はぜんぜんしないから」と店の息子さんが言う。意外なほど旨かった。

わがままワイフに今日こそもの申せる活力さえも得たような気分だ。壁に貼られた品書きには、クジラ刺しもあれば煮物、焼き物。「やきそば(肉入り)」と「ラーメン(インスタント)」なんて庶民の心を先読みする正直メニューもあり。

なかでも、「練るときがいちばん大事」とマスターが言う、自家製こんにゃくはとてつもなく美味。それに2杯目のお酒は、自家製のカリンサワーと巨峰サワーを頼む。果実の薫りだけを生かし、まったく甘くない奇跡のサワーだ。感動した。そのときだった。「あらすいません」「いや、こちらこそ」「お気遣いなく」。ほろ酔いの妻が、気を抜きついでに邂逅を果たしているのは、地元の印刷会社にお勤めのお二人であった。

マスター手製の椅子は小作りなため、否応なく見知らぬ人と”袖振り合う”寸法になっている。どう考えても、妻があちらにぶつかっているのだけれど、大トラのオーラだろうか、相手を恐縮させている。恐縮しながらもお隣さんは、ここに通ってもう四半世紀なのだということ、結婚を報告した際には、マスターからご祝儀まで貰ったことなどを教えてくれた。

「ぜひお二人に飲んでもらいたいものがあるの。メニューにはないんだけど、いちごサワーってのがおすすめよ」。おまけに漬け物を混ぜた納豆のり巻きなる一皿までプレゼントしてくる。

たっぷりのいちごで作るいちごサワーは、マスター入魂の一品らしく、思い通りに行かないと「えいや!」と捨ててしまうんだそうだ。職人というよりもう芸術家。「マスター、いちごある?」とお隣さんが聞く。「あるよ……」と言うマスターの横顔がシブい。果たして登場した薄桃色のその酒はふわふわした、でも確かに男らしいリカーが活きた不思議な一杯であった。

「東京オリンピックの頃、君たち生まれてた?」とマスターがふいに聞く。「その年にこの店は創業したの」。1964年だ……。日本の女子バレーが「東洋の魔女」と呼ばれ活躍した時代。「マスターはそこから半世紀、小さな発明品を作り続けてきたのであった……!」と妻がナレーションをする。

僕の実家のお茶農家はこどもの頃とすっかり様変わりした。その昔は手で摘んでいた葉っぱは今は機械で一気に刈り取る。文明の力により人力が必要とされなくなってから、じいちゃんは、じぶんのささやかな発明品を作るようになった。寂しかったのか余暇を喜んでいたのかはわからない。いずれにせよ、じいちゃんの遺品の代表作に「菊芋」がある。焼酎に漬け込んだしょっからい芋をに熟成し、ハレの日に、大事な人だけそれを披露した。

「ユーのじいちゃんが死ぬ前、お土産に日本酒持ってたよな。あのとき、わたしはケチって一番高いのじゃなくて真ん中ランクのを選んだのに、じいちゃん、『こらええのを貰ってもったいなくてよう飲まん』って言ったんだ。そのお礼にと、菊芋をくれたんだけど、辛くてまずくて食べきらんかったんだ、わたしは……アウウ」……待て! 

いつもの大トラワイフの”酔いどれ懺悔”の時間がやってきた。そしてタマネギサワーのせいだろうか、僕はいつになくエキサイトしていた。「僕は、僕は、君のヨッパライ涙はもう見飽きたぜ! 天国のじいちゃんもそう思ってるはずさ!」言ってやった。ついに言ってやった。じぶんに酔うのもたいがいにしろってんだ。僕はマスターにじいちゃんを重ね、マスターの自家製サワーの虜になりなんとなくタフなガイになった心持ち。ぎっと僕を睨み、涙をいったん引っ込めた妻は、泣くよりひどい落ち武者みたいな面持ちのまま帰宅した。僕の「言ってやったぜ」テンションはまだ続いていた。妻は何も言わずに寝た。

そして翌朝目が覚めて、ゆうべのことを思い出し戦慄した。そして、妻がいない。ラッキー! と、嘘だろ……!? が交錯した。妻の散らかった仕事部屋を覗いた。手がかりを探した。ノートとノートの隙間から、奇妙な鉛筆付き手帖が出てきた。じいちゃんの工作品であり遺品の一つ、ハンドメイドノートだった……。知らぬ間に妻は形見分けにもらってきたっぽかった。なんなんだよ、なんだんだよお!(涙)。妻からメールが来たのは春の雷が鳴り響く午後だった。 『ワイフだ。図書館なう。10月1日が日本酒の日ってやつ、意味がわかったぞ。酒とゆう字の右っかわ、”酉”がポイント。酉とは10月のこと。10月に酒造りの新穀が穫れることからそうなったらしい。我家も10月は1日は、ユーのじいちゃんが好きな開運を飲む日に決めた。じいちゃん酉年生まれだしな! 肴にする菊芋は、ちゃんと保管してるから安心しろ』ボキは心でたった一度吠えた。♩エリー my love エリィ~~~!そして。じいちゃんが酉年ではなく子年なことは黙っていようと思った。

Finish! Nice outing!

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